2020年1月18日(土)夜、「ラッシュ(RUSH)裁判報告会&交流会」が新宿区立新宿文化センターで開催され、関係者を含む33名ほどで、報告と交流の場が図られました。
このうち、第1部報告会の全体の様子は、裁判の傍聴もしてくださったライターの後藤純一さんが、「RUSH裁判のこれまでとこれから」という記事を、オンラインマガジン「g-lad xx(グラァド)」に掲載してくださいました。
第1部の梅野充医師(アパリクリニック理事長)による発言は、以下に紹介しました。
また、生島嗣氏(ぷれいす東京)よるアンケートの分析は、以下に報告しました。
さらに、自身もラッシュの輸入で罰金刑の略式命令を受けたものの、それを不服として正式裁判で係争に臨もうとしているMさんからは、率直な思いも語られました。
今回は遅くなりましたが、第2部の交流会と、参加者のアンケート回答を中心に報告します。
交流会は、3グループに分かれて意見交換を行い、最後に全体でシェアしました。
Aグループ 主に医療の観点から
(梅野充医師、古藤吾郎/日本薬物政策アドボカシーネットワーク)
・精神科の臨床の現場では治療に来るような症例は見られないので、刑罰化で規制する必要性はないのではないか
・ニトライトは処方できるような仕組みが取れないか
・ラッシュの規制には、ホモフォビック(同性愛嫌悪)の思考が影響しているのではないか
Bグループ 主に当事者・コミュニティの観点から
(生島嗣、ヒデ/ラッシュ裁判被告人、塚本堅一/元NHKアナウンサー)
・ラッシュは規制前は一般に普及使用されており、取り立てて大きな害悪はなかったのではないか
・ラッシュをどのような仕組み(理由)で規制しようとするのか、意図が分からない
・ラッシュは覚醒剤と違う(害悪の低いものである)という点を強調すると、逆に覚醒剤などの薬物問題との分断が生まれる危険性も自覚する必要がある
・ラッシュを持っているだけで逮捕されるなどは理不尽である
・ラッシュ規制の恐ろしさは、薬物自体の害悪ではなく、摘発された結果、懲戒されたり、見せしめに合うといった点にある。人権の問題といえる
・中国では店では買えるがインターネットサイトでは購入できない。人づてに求める結果、偽物が出回る弊害が出ている
Cグループ 主に法律の観点から
・この裁判では、憲法13条の自由や幸福追求権は争点にしないのかという質問が出された
・弁護士から、この裁判は、ラッシュの解禁を主張するものではなく、むしろ憲法31条の「法の適切な手続(デュー・プロセス)」がなされたかどうかが争点である、と説明された
・ラッシュを規制したことで、覚醒剤などより害悪の高い薬物の使用の増大を招いているのではないか
・判決が出た後、どのような展開を考えているのか知りたいという質問が出された
・弁護士から、おそらく第1審で終わらず、その先まで見据えて係争していくことになるだろう、と説明された
終わりに、森野弁護士より次のような総括があり閉会となりました。
「今回は、適当な人数で有益な意見交換をすることができた。こういう集まりとしては、参加者の意識も高く、弁護人としても、とても刺激を受けた。国で規制されているからそれが当たり前なのだと思わず、いろいろな視点から議論できることを重視したい。これからも支援をお願いしたい。」
その後、近くの中華料理屋に会場を移し、半数以上の方が継続参加して懇親会を持ち、さらに意見交換を深めることができました。
以下に参加者のアンケート回答を報告します。
1 このイベントは何で知りましたか? Facebook、関係者からなど 詳細略
2 イベントに参加していかがでしたか? 「よかった」との回答がほとんど
3 イベントの内容について、感想を聞かせてください
・ラッシュ(RUSH)裁判がなぜ開廷しているのか?という本当の理由を知ることができて、人権問題にもつながることが判りました。国の規制のあり方、なぜ規制をかけるのか? いろいろと知らなかったことを知ることができて、良かった。ありがとうございました。
・ラッシュ裁判の経緯など詳細な話が聞けました。医療・司法・当事者・コミュニティの方など、様々な立場の方の話が聞けて勉強になりました。
・裁判で何が争点になっているのか、それについて、いくつかの論点において知ることができた。
・裁判のポイントが整理され、理解しやすかった。当事者の方の声を聞く貴重な機会だった。
・ラッシュに関して、開示されている情報すら少ないので、新たな情報を得ることが出来て勉強になりました。
・いろいろと勉強になりとても良かった。特に、精神科の梅野先生と直にお話して、疑問(向精神薬としてニトライトを使う事について)が聞けた事が良かった
・さまざまな立場からの意見と情報をえられた。当事者の話などから、今の日本の状況の一端をみた(人権への配慮など)
・RUSHについて知識のない人達がRUSH使用が刑罰の対象になることをあたり前にうけ入れること、そういう風潮が怖いなあと思う。
・ヒデさん裁判が長いなあと思っていたので、現状がこうなっていることがわかってよかった。各地にいろいろな経験をされたかたがいて(しかもひどい経験をされ)、胸が痛いです。
・とても重要な裁判だと改めて思いました。裁判を闘われてるひでさんを尊敬します。
・摘発?時の怖さを知り、背筋のさむくなる思いをした。今後の改善を切に望む。
・様々な状況の方々がいて、人権侵害に近いような形にされた方もいたことは非常にショックです。
・当事者の生の声を聞くことができて良かったです。
・今後の動向についての関心が深まった
・自分自身海外に住んでいて、ラッシュ(poppers)が普通に売られていたので、日本でも使えるようになって欲しいです。
・海外に住んでいて、普通も持ち歩いている。気を付けないとうっかりと持って入国してしまいそうだ。気をつけます。
・RUSHの検証や罪の確定などの不透明さに疑問を感じています。
4 今後、裁判に関して、どのような取り組みがあったらいいと思いますか?
・理不尽な逮捕であることを正しく伝えられるようになれば良いと思う。薬物の恐ろしさだけではなく、規制のかけ方にも国を問い正す観点を強調してほしい
・現在の規制の解除の動きに影響を与えると良いと思います。
・法制化するにあたり、きちんとした形で審議されていないような感じがします。
・薬物の非犯罪化、薬物政策において最も理想的、現実的で人権に配慮した政策の運用
・解禁に向けての取り組み
・ラッシュだけでなく薬物等の依存症への対応の問題点が広く知られるといいかと思います。
・体への影響がないことを明らかにする
・より多くの人(一般の人、医療や法務(司法)、ソーシャルワークの専門家)に知ってもらう
・関係者に対する精神面、サポート支援の協議
・裁判の進行状況をネットでもすぐに検さく出来るような情報の周知があればいい
・進ちょく情報をHP等で開示して頂けると有難いです。
・ 裁判の経緯をウェブ上で公開してほしい
・こういう集い、ゆるく強いネットワークが必要だと考えます。
・継続的な報告と意見交換の場
・これからも報告会を定期的に開催して下さい。
5 今後、ラッシュに関して、どのような取り組みがあったらいいと思いますか?
・まずラッシュが人体に有害でない事をもっと周知出来たらと思う。一般の人は覚せい剤やヘロインなどの危険ドラッグとラッシュの区別はまず付かないと思う。
・法律の変更には、LGBTQ関係者だけでなく、より広範な人々の理解も必要になる為、一般の理解も得られるような取り組みが必要だと思料
・根底にはセクシュアリティの問題があるはずなので、そこにつなげた活動が必要なのではないでしょうか。
・「指定薬物」としての規制という観点だけでなく、非犯罪化、ハームリダクション、人権などの観点からの議論
・警察etcの取り締まりの発想ではない、依存症全体の回復や予防の視点での政策や医学的な観点での危険性の把握
・もっときちんと審理させて、世界レベルで物事を取り組んでほしいと思います。
・泣き寝入りする人が多い中で、ひとりでもヒデさんのように闘う人がいれば応援したいです。
・一番良い(ありがたい)のは、以前のように使っても、持っても良い状態に戻してほしい。ただし、使う上での条件をつけ加えるほうが良いかと思う。
・再び使用できるようになったら良い
・解禁に向けての取り組み
・規制に関して見直す動き、海外の状況もかんがみ。
・リアルな声の共有
・流通規制と、個人使用とは別問題としてあつかうべき。(個人使用は犯罪ではなくカウンセリング又は医療へつなげることがいいと思います)。
・もし規制がなくなったら、品質のよい製品の流通を整備する
6 あなたのことを答えられる範囲で教えてください 略
7 あなたや回りの人で、ラッシュの使用や逮捕・起訴などの経験はありますか?
ある 12 知らない 5
・所持で警察沙汰になった人を弁護士につなぎました
・規制が厳しくなる前は普通に使用している友人が結構いた。規制の後は分らない
・某ゲイショップで、まぜるとラッシュになるものを販売していたと聞いた事があります。
・使用している人はいるが、法律に反しているという意識を持って使っている人は少ない気がする。
・RUSHをSexの時に使用する人は会ったことがない。
会終了後、メールの形で感想もいただきました。ご本人のご了解を得て紹介させていただきます。
・あらためて、この裁判を闘われているヒデさんに、弁護団の皆さんに、心から尊敬と感謝の念を伝えたいと思いました。性が絡む部分が大きいがゆえにいかがわしい問題と見られたり、「決まっているものには従うもの」という価値観が強い(そして強まっている)日本社会の中で厳しい風当たりも予想できる中で、この裁判をされることの勇気は、讃える言葉が見つからないくらいです。
そして、こうしたことが人権を守る砦を築くために積まれる石の一つなのだと思います。そうした砦は、私も含め多くの人が守ってくれるもので。だから、心からお礼を言いたい気持ちです。ありがとうございます。
会では、こうした参加者の声を支えにしながら、ラッシュ裁判に臨んでいきたいと思います。
今後、【千葉】ラッシュ裁判は、5月8日に予定されていた判決言い渡しの公判期日が延期となり調整中です。
日程が決まり次第、お知らせします。6月18日(木)午後に決定しました。
【横浜】ニトライト裁判は、6月24日(水)午後から、横浜地方裁判所川崎支部で、検察官証拠並びに弁護人請求証拠取り調べの公判が行われる予定です。
詳細については、お問い合わせください。
これからも、裁判についてご理解、ご支援をよろしくお願いいたします。
2020年6月11日追記
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