日本では使用が規制されている「ラッシュ」ですが、最近のシドニー工科大学の研究によると、ラッシュの身体的、精神的悪影響は極めて低いことがわかったことを、GENXYさんがウェブ記事として紹介してくれました。
🔊「ラッシュ」の害はほぼゼロ。最新研究が明らかに(GENXY2020年6月4日配信)
https://genxy-net.com/post_theme04/20641l/
亜硝酸エステル、通称「ラッシュ」と呼ばれるドラッグは、依存や性生活、そして精神的なリスクが少ないことで有名である。
LGBTコミュニティの中でも、特に、ゲイやバイの男性がリラックスやセックスの効果を高めるのに使用することが多い。
また最近の研究では、「ラッシュ」は健康、社会、法律、経済的な視点からも依存性の可能性が極めて低いとのこと。
さらに、ラッシュの使用と精神的問題や、心理的ストレスに相互関係がないことも明らかにされている。
シドニー工科大学では、800人以上の18歳から35歳の男性を対象とした「ラッシュ」に関する研究を実施。
この結果から、研究の責任者であるダニエル・デマント博士は、オーストラリアの医薬品行政局はラッシュの使用を禁止すべきではないと述べた。
2018年にオーストラリアの医薬品行政局は、「ラッシュ」をヘロインなども含まれる9つの重度のドラッグに指定し、使用を禁止したのである。
しかし、この決定にたいして多くのLGBTコミュニティが勢力的に抗議や署名活動を行った。その結果、医薬品行政局はこれを白紙に戻し、「ラッシュ」を危険薬物から取り除くことを決定。これを受けて、2020年2月から薬局で購入できるようになった。
「ラッシュ」を禁止すると10万人以上が犯罪者に!?
デマント博士は「ラッシュ」を禁止すると、オーストラリアでは10万人以上が犯罪者になる可能性があると述べている。
また、博士はこの調査からLGBTコミュニティの人々が、生涯においてどれだけ頻繁に「ラッシュ」を使用しているのかが明確にわかると発言。
さらに博士は、「ゲイやバイの『ラッシュ』使用者のほとんどは、彼らのゲイやバイとしての社会的アイデンティティによって、すでに抑圧や軽蔑を受けている。それにも関わらず、非常に低リスクである『ラッシュ』を禁止しようとすることは、LGBTコミュニティに対する差別的要素があるのではないかという疑問が生じる」と述べている。
最近では、「ラッシュ」は処方箋があれば薬局で入手可能(オーストラリアの場合)。
しかし、多くの人々はハッテン場やLGBT関連のバーで違法に購入しているケースが多い。この場合、薬局では一本あたり数百円で購入することができるが、違法に購入した場合、なんと50オーストラリアドル(日本円で3500円前後)もする。
博士は次のようにものべている。
「次の医薬品行政局の『ラッシュ』に対する政策は、禁止ではなく極端なLGBTコミュニティへの軽蔑を取り除くような政策であることを期待したい。さらに、私たちは『ラッシュ』が人々にとってハイになるために使用されるものである、という先入観を取り除くことができる」
「そして薬局で販売を行うことで、『ラッシュ』が高水準で、効果的なものであるというイメージを作ることができるのではないだろうか」
今回の調査結果から、「ラッシュ」が身体や精神の健康に悪影響を及ぼす可能性は極めて低いことがわかった。
「ラッシュ」はオーストラリアや、特に欧米諸国で非犯罪化されているが、一方、我々が住む日本では依然として「ラッシュ」は危険薬物として使用・所持を禁止している。これにより多くの人が刑罰を受けていることは言うまでもない。
重度ドラッグと違い、自己や他人に悪影響を及ぼすことのない「ラッシュ」は本当に禁止されるべきなのか、もう一度科学的根拠をもとに吟味されるべきではないだろうか。
この報道を受けて、岡口基一・仙台高裁判事は、次のようにブログでつぶやいています。
🔊https://bo2neta.hatenablog.com/entry/2020/06/08/060524(2020年6月8日配信)
〈害がないであれば、日本でも直ちに合法にすべきでしょう。
槇原敬之も、ラッシュの所持が問題とされています。〉
Twitter上でのつぶやきから、日本での規制に対する声を紹介します。
●https://twitter.com/nightymilk2/status/1268660867337383936
6月5日
大麻は経験ないけれど。ラッシュは禁止される前まで何度かパートナーとセックスする時に使ったことがあります。一時的だけど互いに溶け合う感覚。大麻もラッシュも。なんでもかんでも禁止にすれば良いというものではないと思う。お酒はOKで大麻とラッシュが駄目と言うのは、どう考えても理解できない。
●https://twitter.com/tanashikitaguch/status/1268673887467737089
●https://twitter.com/Chocola20180405/status/1269053381630259200
6月6日
要するにラッシュ所持や使用で逮捕になる意味がないという事。
違法薬物として摘発する理由がなくなった。
オーストラリアの規制に対するコミュニティ当事者の取り組みや、国の対応は、大変参考になります。
これからのオーストラリアの事例については、紹介していきたいと思います。
こうした状況を知るにつけ、日本ではなぜ、「ラッシュ」に対する個人罰則化が当たり前のこととして受け入れられているのか、その規制に当たっての科学的な根拠はどこにあるのか、改めて問い直したい思いが抑えきれません。
日本の規制の状況は以下に簡潔にまとめられています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5_(%E8%96%AC%E7%89%A9)
wikipedia
欧米の規制の状況は以下にまとめられています。
https://en.wikipedia.org/wiki/Poppers
wikipediaの英語版
その他の情報は以下を参照ください。
🔊基本情報
アディクション・スタディーズ 薬物依存症を捉えなおす13章 著者 松本俊彦 (編)
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