ラッシュ吸入後の血中濃度は0.05mg/Ⅼ未満

ラッシュは、使用すると血管拡張、血圧低下、メトヘモグロビン血症、平滑筋弛緩、視覚障害などをもたらすことから、有害であるとされ、日本では指定薬物として規制されています。

しかし、そうした重篤な症例が、頻繁に発生しているとはいえません。

その点を考えるうえで、人間が適量を吸入した際の血中濃度を明らかにした論文が有益です。

 

本論文は、『Toxichem Krimtech』(中毒犯罪学) 2015;82という学術雑誌に、フライブルク大学病院法医学研究所中毒法医学グループが発表した論文です。

Analysis of ‘poppers‘ products and analytical detectability of a single use of ‘poppers‘

 

原文は、以下からPDFを閲覧できます。

🔊https://www.gtfch.org/cms/images/stories/media/tb/tb2015/Vogt_et_al_2015.pdf

以下に日本語訳(千葉ラッシュ裁判弁護団訳)を紹介します。


「ポッパーズ(ラッシュ)」製品の含有成分分析と「ポッパーズ(ラッシュ)」単回使用後における成分検出可能性について
スザンヌ・フォークト ヴェレーナ・アンゲラー ユルゲン・ケンプ フォルカー・アウヴェルター
フライブルク大学病院法医学研究所 中毒法医学 【住所 連絡先等 省略】
目的:亜硝酸エステルは、「ポッパーズ」(訳注:わが国では「ラッシュ」の呼称が一般的なため、以下「ラッシュ」と訳す)としても知られ、医療薬あるいは“媚薬”として長い歴史を持つ。血管拡張、血圧低下、メトヘモグロビン血症、平滑筋弛緩などの作用を有するという特徴を持っている。我々の知る限り、対応するアルコールの検出による「ラッシュ」使用の検証分析に関しては、これまでのところ死後の剖検症例についての報告があるのみである。本研究で我々は、適当量の「ラッシュ」を投与した場合の検出方法を開発することを目的とし、その方法を用いてイソプロピル、イソブチル、N-ペンチルおよび2-メチルブチル亜硝酸塩を含有する「ラッシュ ウルトラ ストロング」を吸入後に採血した血清サンプルを測定した。加えて、いくつかの「ラッシュ」製品を分析して含有成分を明らかにした。
方法:分析は、キャピラリ—カラム(RTXR-502.2, Restek社製, 長さ60 m, 内径0.53 mm, 膜厚3 μm)を用いたClarusガスクロマトグラフで実施した。これはヘッドスペースオートサンプラーと水素炎イオン化検出器を装備したものである。キャリアガスは、45mL/minの流量の水素を用いた。血清サンプルの分析には10mL /minのスプリットフローが用いられ、純粋な亜硝酸塩と「ラッシュ」製品の分析の際は、スプリットフローを増量した。
結果:76個の異なる「ラッシュ」小瓶の成分分析をした。製品の51.3%で、表示された含有成分内容と成分分析結果とが異なっていた。適当量の「ラッシュ」の吸引使用後の血清サンプル分析では、最初に採血された3つの血清サンプルで2-メチル-1-ブタノールが検出され、1-ペンタノールは、2回目の採血サンプル中にのみ検出された(吸入11分後)。他方イソプロパノールとイソブタノールの濃度は0.05mg / L以下であり、検出されなかった。
結論:「ラッシュ」の娯楽的使用は、摂取後比較的短時間に限り、対応するアルコールを分析することにより検出可能である。アルコール飲料の同時投与は、イソブタノールや2-メチル-1-ブタノールのような典型的な同族アルコールとの重なり合いが生ずる可能性がある。実地の事案における法医学鑑定では、現場で発見された「ラッシュ」の小瓶の内容物を分析すべきである。なぜならその「ラッシュ」の瓶中には、表示された成分以外の亜硝酸エステルを含む可能性があるからである。
1.はじめに
亜硝酸アミルは、19世紀後半に、血管拡張作用を有するために狭心症の治療に使用された最初の亜硝酸エステルであった。その後長年にわたり、それは「媚薬」として誤用され、さらに様々な亜硝酸エステルによる「ラッシュ」製品が生み出された。メトヘモグロビン血症や循環系不全による中毒症や死亡に至る症例はまれなものである。
2.材料と方法
材料とサンプルの準備: 1gの硫酸ナトリウムと600μLの水を入れた20mLのヘッドスペースバイアルに、500μLの血清を加えた。製品の成分スクリーニングのために、76の異なる「ラッシュ」小瓶を、様々なオンラインショップで購入した。500μLのラッシュ溶液の試料を、20mLのヘッドスペースバイアルに注入した。 バイアル瓶を密閉した後、10μLの気相化した検体を2番目の20 mLヘッドスペースバイアルに移し、分析を行った。
方法:分析は、キャピラリーカラム(RTX®-502.2、Crossbond®ジフェニル/ジメチルポリシロキサン相専用、Restek社製、長さ60 m、内径0.53mm 、膜厚3μm)を用いたClarusガスクロマトグラフで実施した。ヘッドスペースオートサンプラーと水素炎イオン化検出器を装備したものである。キャリアガスは、45mL/minの流量の水素を用いた。血清サンプルの分析には10mL /minのスプリットフローが用いられ、純粋な亜硝酸塩と「ラッシュ」製品の分析の際は、スプリットフローは500mL /minに調整した。

単回使用の自己実験:44歳の男性ボランティアが、イソプロピル、イソブチル、N-ペンチルおよび2-メチルブチルの亜硝酸塩を含有する「ラッシュ・ウルトラ・ストロング」を経鼻吸引した。血液サンプルを経鼻吸引前、途中、後に採取した(表1)。

3.結果と考察
製品の成分スクリーニング:76個の異なる「ラッシュ」小瓶を分析した。製品の51.1%(39瓶)において、表示された含有成分内容と成分分析結果とが異なっていた。表示された亜硝酸エステル(亜硝酸イソプロピル、亜硝酸イソブチル、亜硝酸アミル)に加えて、亜硝酸ブチル、亜硝酸イソペンチル、亜硝酸2-メチルブチルが検出された。製品の54%(41瓶)からは、1種類以上の亜硝酸エステルが検出された。多くは亜硝酸ブチル系(亜硝酸ブチルと亜硝酸イソブチル)もしくは亜硝酸ペンチル(亜硝酸アミル、亜硝酸イソペンチル、亜硝酸2-メチルブチル)のいずれかの混合物で、おそらく純度の低い化学物質が混入したためと考えられた。

単回使用:適当量の「ラッシュ」(「ラッシュ・ウルトラ・ストロング」)を経鼻吸入使用した後に採血したところ、最初に採血された3つの血清サンプルから2-メチル-1-ブタノールが検出された。1-ペンタノールは、2回目の採血サンプル中にのみ検出された(吸入11分後)。イソプロパノールとイソブタノールは検出できなかった。いずれにおいても血中濃度は0.05mg / L未満であった(表1)。

4.結論
「ラッシュ」の娯楽的使用は、摂取後比較的短時間に限り、対応するアルコールを分析することにより検出可能である。アルコール飲料の同時投与は、イソブタノールや2-メチル-1-ブタノールのような典型的な同族アルコールとの重なり合いが生ずる可能性がある。実地の事案における法医学鑑定では、現場で発見された「ラッシュ」の小瓶の内容物を分析すべきである。なぜならその「ラッシュ」の瓶中には、表示された成分以外の亜硝酸エステルを含む可能性があるからである。

論文が示すこと
この論文は、実際の人間の吸入によって、血中濃度を測定した点に大きな意義があります。
通常の使用では、到底、メトヘモグロビン血症や視覚障害を及ぼす摂取量とはならないことが判ります。
また、韓国論文が、いかに人体摂取と相違した実験を行っているかも明らかです。
裁判では、こうした科学的データに基づいて、日本の規制が妥当であるか、判断されることを望むものです。

【千葉】ラッシュ裁判・【横浜】ニトライト裁判とも控訴審へ

【千葉】ラッシュ裁判は控訴に向けて準備中で、2021年1月末に検察側の意見書が提出され、公判は2月以降の開催の予定です。

【横浜】ニトライト裁判も罰金刑の有罪判決を受けたため、控訴に向けて準備中です。予定はわかり次第、お知らせします。


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