「全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査」は、精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態を把握している悉皆調査で、厚生労働省科研費補助金事業として1987年からほぼ隔年に実施されています。
報告書は、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所のウェブサイトで公開されています。
🔊https://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/report/index.html
この調査では、生涯における薬物使用歴、調査時における精神科的症状に関して臨床的に最も関連が深いと思われる「主たる薬物」、乱用薬物の詳細情報などが、疫学的調査により知ることができます。
2020年12月現在、サイト上では、1996年度~2018年度までの19報告書が掲載されていますが、【千葉】ラッシュ裁判では、1996年度~2016年度までの18報告書を分析しました。
「ラッシュ」は、2000年の調査で「その他」の薬物に分類されているのが初出となります。
2012年以降、「危険ドラッグ」は「ハーブ系」「非ハーブ系(パウダーないしはリキッド)」を指すものとカテゴリー化されるようになりますが、「ラッシュ」は「危険ドラッグ」とは別分類が取られています。これは、臨床医学的に「ラッシュ」を「危険ドラッグ」と同一に見なすことが妥当でないことを意味しているといえます。
また、「その他」の内訳といっても、2016年度の〈「乱用歴」のある「その他」の薬物〉という表の中で確認できるのみで、ラッシュが、具体的な精神的症状と関わる「主たる薬物」として報告されている事例は皆無です。つまり臨床例からは、「ラッシュ」が精神疾患の主たる治療対象として現れていないことが明らかなのです。
従って、日本において、ラッシュの使用が、社会問題となるほどの人体被害をもたらしているとはいえず、「指定薬物」の要件には当たらず、「指定薬物」として規制する意義、それに連動する量刑が、妥当性を有しないものであると考えるものです。
私たちがこの調査を重要視したのは、治療の対象として現れていないことは、ラッシュに「麻薬又は向精神薬と同様の有害性」がないことを示したかったからです。ところが、【千葉】ラッシュ裁判判決では、この厚労省補助金事業で行われている全国で大規模な信頼性の高い事例に対し、「保健衛生上の危害が生じた場合であっても、医療機関に対して自傷他害の報告がされるとは限らない。また、限られた調査対象中に報告例がないからといって、自傷他害事例が生じていないと断定することもできない。 」と矮小化した判断を与えています。
この司法判断は、実態を踏まえた妥当なものといえるのでしょうか。
1999年度 「ラッシュ」の報告なし
1998年度 「ラッシュ」の報告なし
1996年度 「ラッシュ」の報告なし
【千葉】ラッシュ裁判・【横浜】ニトライト裁判とも控訴審へ
【千葉】ラッシュ裁判は控訴に向けて準備中で、2021年1月末に検察側の意見書が提出され、公判は2月以降の開催の予定です。
【横浜】ニトライト裁判も罰金刑の有罪判決を受けたため、控訴に向けて準備中です。予定はわかり次第、お知らせします。
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名義 ラッシュコントロール
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