ぷれいす東京生島嗣さんのメッセージ

NPOぷれいす東京の2018年度活動報告会(2019年5月25日)に向けて、代表の生島嗣さんが、ラッシュ裁判の意義について、コメントを書かれました。ご承諾を得て、一部を抜粋して転載させていただきます。

 

🔊ぷれいす東京活動報告会でトークします

 

🔊「声をあげる陽性者たち」の企画に寄せて(ぷれいす東京コラム)

   https://ptokyo.org/column/post/11354

生島 嗣 特定非営利活動法人ぷれいす東京代表 掲載日:2019/5/20

 

そもそも裁判をおこすとなると、とても勇気がいることだ。また、刑事事件で起訴された場合、多くの人は、なるべく現実的な対応をして、早く裁判を終わらせたいと考えるのではないだろうか。(略)

 

今回のトークに参加する3人は裁判を通して何かを変えようとしているという共通点がある。どんな化学反応が起こるのかを楽しみにしている。
さて、今回のスピーカーについて紹介しておきたい。(略)

3)ヒデさん(RUSH裁判 被告)RUSHは指定の違法薬物として規制されたが、行き過ぎだと争っている。

ヒデさんはRUSH(ラッシュ)を輸入しようとして、税関で見つかり、医薬品医療機器等法と関税法違反で起訴され、地方公務員の職も懲戒免職となった。

 

ラッシュは、古くからゲイショップ等ではレジ脇で普通に売られていたものだった。2005年頃から脱法ドラッグとして販売や流通が規制が始まり、2007年には指定薬物として違法なものに位置付けられた。さらに、2014年には、各地で脱法ドラッグによる事故等の騒動があり、その影響からか法改正が行われ、所持や規制までも厳しく制限されることになった。2015年からは関税法も改定され、個人輸入などで税関が摘発すると警察が連動することになった。

 

最初は販売の規制が主な目的だったが、2014年前後に、池袋など各地で”脱法ドラッグ”による交通事故が起こるなどしたことで、規制強化を是認する社会情勢が促進されていった。しかし、ラッシュには、そうした精神毒性や保健衛生上の危害が認められないにも関わらず、その範囲が見直されることはなかった。

 

弁護団がこうした規制強化のプロセスを確認したところ、指定薬物を決める会議の場で根拠とされた文献の説得力に疑問が生じたのも事実だ。処罰化によって仕事を解雇されるなど、本人の人生にも大きなデメリットを与えている点も見逃せない。

 

税関での指定薬物の摘発件数。過去の財務省の発表から推測すると、このうちの7割がRUSH(ラッシュ)だと思われる。2015年:1,462件、2016年:477件、2017年:275件、2018年:218件 現在でもかなりな人数が摘発されていると思われる。

 

また、ぷれいす東京の研究班が出会い系アプリ利用者を対象に実施したLASH調査(2016年)回答者:6921人中、RUSH(ラッシュ)の過去の使用経験は、6ヶ月以内:284人(4.1%)、7ヶ月〜1年以内:71人(1%)、過去に使用:1,232人(17.8%)であった。2018年に実施したPrEP調査では、回答者:6247人中、6ヶ月以内:382人(6.1%)であった。

 

RUSH(ラッシュ)の使用者はまだまだ継続して存在する。

 

今でも近隣の国々では流通していたりする。ラッシュはイギリスでは、抗精神作用が否定され、規制の対象からも外された。ヒデさんの裁判では、日本の薬物の規制のそのプロセス、また在り方が問われている。このような「ダメ、ゼッタイ」という施策がよりハードなドラッグの使用にMSMを追い込んでいるようにも思える。(略)

 

これまでにも多くのHIV陽性者の声が現状を浮かび上がらせ、変えるためのきっかけとなった。もっとも大きなものは”薬害エイズ裁判”だ。また、それ以外でも、職場(含む医療機関)や学校における差別的な取り扱いにHIV陽性者たちが声を上げてきた。今回のトークを通して、声を出すことの意味について、3人のスピーカー、コメンテーターと一緒に改めて考えてみたい。