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PRイベント 塚本堅一さんのコメント

2018年9月30日に行われた

🔊PRイベント「ラッシュをめぐる最前線」

に進行として、また自身の体験も語っていただいた塚本堅一さん(元NHKアナウンサー)から、イベントに参加してのコメントをいただきました。

体験を語る塚本堅一氏
体験を語る塚本堅一氏

私がラッシュの事件で逮捕されてまもなく3年。

反省と後悔の中で、だんだん精神が不安定になりました。

どうやって気持ちを整理したら良いのかわからない中で、1年以上経った頃にようやく精神科の医師のもとにたどり着きます。 そこで「あなたは依存症ではないけれども、同じようにクスリで人生を壊してしまった仲間と一緒に(心を)回復していきましょう」と提案をされました。

そこから依存症の施設に9ヶ月間通い、プログラムを通じて少しずつ心の状態も良くなっていきます。

 

その施設の利用が終わった翌日。

たまたま近況報告で訪ねた友人から「ラッシュで逮捕された人が裁判で争うことになっているらしいけど、興味はあるか?」と聞かれました。

突然のことで驚きつつも、ラッシュを輸入したことで解雇になった人が、そもそも薬物指定の背景に問題があったのではないか?などと主張し裁判で争うことになるとのこと。

これを聞いてまず思ったのが、寝た子を起こすようなことをしないでくれ・・・。でした。

せっかく施設に通って、ようやく心の折り合いがついてきた頃なのに、まだラッシュのことをはなすのか!と。

でもそれは羨望入り混じった複雑な感情だったと思います。

 

ラッシュは、ご存知の通りセックスドラッグです。

自分が逮捕された時には、裁判になって諸々暴かれるのが怖くて堪らず、裁判で争うということは微塵も考えずに取り調べを受けました。

裁判の判決によっては人生が大きく変わる人を前に、私に何ができるだろう。ところが、よく聞くと私に求められたことは、裁判云々よりラッシュの事件を起こし逮捕された人たちに向けて何か発信することはできないかということでした。

 

なるほど。それなら、私だからこそ言えることもあるでしょう。これまで、ラッシュで逮捕された人たちがどういう状況で購入したのか、逮捕されるとどうなるかという情報がほとんど聞こえてきませんでした。

ここ数年、税関における指定薬物の摘発の9割はラッシュです。平成27年の1462件をピークに減っているとはいえ、いまだに買い続けている人はいます。

それが、故意なのかどうかわかりませんが、私や裁判を起こしたヒデさんのように「ラッシュに似た合法なものが出来上がる」や「法に触れることはない」といった文句を信じて購入ボタンをクリックする人、自分は捕まるはずないと根拠のない自信を持つ人など、様々な人がいるでしょう。

その人たちに向けて、何が言えるか。それは、ラッシュで捕まると、現在だと覚醒剤の所持・使用とほとんど変わらない刑罰が下されている。などの情報だと思います。

そういった、現実的で使える情報が、ラッシュに関してはあまりにも少な過ぎる。

 

もう一つ大事にしたいのは、逮捕経験者のその後の心を寄せる場所です。

もちろん、KENさんのように、支えてくれる人がいて、前を向いて仕事を継続させている人もいるでしょう。

ラッシュ事件で逮捕され、解雇された後の気持ちのやり場がない中、どうやって生きているか。

ラッシュは依存薬物ではない分、薬物依存の回復施設や、依存症治療の病院などに繋がることはほぼゼロ。その分一人で抱え込んで潰れてしまうことが心配です。

 

今回のイベントを通じて、まだまだ関心のある人がいる話だということを実感しました。

そして、ドラッグのことだからこそ話すことが大事だとも思いました。

機会があれば、これからも私の経験を伝えていきたいです。