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指定薬物制度の議論は充分だったか?

ラッシュの規制は、2006年の旧薬事法の「指定薬物制度」の導入によって行われました。

その議論をしたのが、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会(指定薬物部会)でした。

 

2006(平成18)年11月9日に開催された指定薬物部会の概要や議事録や資料は、

🔊ホームページ

上にアップされています。


「指定薬物制度」は、麻薬などと類似の有害性を有することが疑われる物質を、迅速に規制することを目的に設けられたものです。

その大きな要件は

①中枢神経系への作用を有する蓋然性が高いこと

②保健衛生上の危害が発生するおそれがある物であること

です。


ラッシュに該当する亜硝酸エステル類は6種類挙げられています。

1亜硝酸イソブチル

2亜硝酸n-ブチル

3第3級亜硝酸ブチル

4亜硝酸イソアミル

5亜硝酸イソプロピル

6亜硝酸シクロヘキシル

これらの規制の根拠は、

🔊資料3

によると

「アメリカン・ジャーナル・オン・アディクション」(2001年)という学術雑誌論文が典拠となり

「中枢神経系への作用」として、「頭痛、めまい、運動失調」などの症状が示されています。

 

しかし、この典拠となった論文には、ラッシュの総称である亜硝酸エステル類について、上記のような神経系統(Nervous system)への症状を挙げるものの、その薬理作用は

「血管拡張による血圧低下によってもたらされるもの」とされ、

中枢神経系への作用から来るとは明記されていません。


「アメリカン・ジャーナル・オン・アディクション」についてはこちらへ

 

🔊審議会の議事録

を読むと、典拠論文では明記されていない中枢神経系への作用がラッシュにはあるように事務局が作成した資料に基づき、審議されています。

審議委員の誰一人、資料3を疑うことなく、もちろん典拠論文に当たることもなく、亜硝酸エステル類は、「指定薬物」として指定されていった経過が浮き彫りになります。 


また、保健衛生上の危害がどの程度見られるのかも、審議された形跡は見られません。


ラッシュは、このように充分審議されたとはいえないうちに「指定薬物」のカテゴリーにまぎれ込まれ、あたかも麻薬などと類似する作用のある薬物と見なされ、規制されるようになったのです。